【書評】『超速! Webページ速度改善ガイド 』を読みました。
ご恵贈頂いた本である『超速! Webページ速度改善ガイド 』を読み終わったので紹介します。
あほむさんと SSR Panel Talk した時の話
いきなり関係ない話をしますが、 著者のあほむさんとPixel Gridのりぃさんと一度 Node 学園でパネルトークをやらせていただきました。その時の話で印象的だったのが、下記の話でした。
- セキュリティやパフォーマンスも非機能要件だが、セキュリティは『実施しなかったら会社に与えるダメージが大きい』のに対してパフォーマンスは『実施しなくても会社に与えるダメージは見えにくい』
- ただだからといって疎かにしていいわけではない、セキュリティは損害が会社のリスクとして見えやすいが、パフォーマンスはユーザビリティといった売上部分の根幹に関わる
- 幸い、あほむさんの会社にはたまたまパフォーマンスに気をつけてる人が多く、そういう人を育てる土壌もある
という話を10月にしてました。大分端折っていますが、単純に「いいなぁ」と思ったのを覚えています。
そしたら、あほむさんと泉水さん(二人共同じ会社)からパフォーマンスの知見を本にした物が出るという話でした。これはまず買うしかない。
Webページにおけるパフォーマンスの本
Webページにおけるパフォーマンスを題材にした本というのはこれまでにも数多く出版されています。教科書的な話で言うと、古くはハイパフォーマンスWebサイトから、続・ハイパフォーマンスWebサイト、ハイパフォーマンスブラウザネットワーキングとそれぞれ出版されています。
僕も仕事柄このあたりの本は大体抑えています。3年以上前に出版された本ですが、ハイパフォーマンスブラウザネットワーキングはネットワークのレイヤでかなり解説されているので、今読んでも学びがあるかなり良い本だと思います。
ただ、『超速! Webページ速度改善ガイド』ほどプロトコルのレイヤから画像の圧縮形式の話、ブラウザの内部処理の話、JavaScriptのGC、Service Workerの話までWebに関わる古今東西と未来をきちんと1冊にまとめている本は僕は知りません。
強いてあげるとすると、パフォーマンス向上のためのデザイン設計という本が多少近いでしょうか。でもこれもプロトコルレイヤの解説とブラウザの内部処理レベルの解説は超速本よりは見劣りします。
これだけの話をまとめているという点だけでも読む価値はあるかと思います。
超速本のターゲット層
細かい所も読もうとすると、玄人向けだと思います(自分が読んでも難しいと感じる所が多かったので)。とはいえ全く知らないという人でも手元において損する本ではありません。逆に全く知らない人でもパフォーマンスの職人が何を考えているのかを知るという意味では有意義だと思います。
読み方としては、『一般読者向けに概念を把握する』ところと『Webパフォーマンス職人向けに実践するところ』を分けて読むと良いと思います。最初に概念、次に実践という丁寧な構成になっているので、まずは概念から理解し、実践は分からなかったら一旦飛ばして深く知りたければ後で抑える、という読み方もできます。これ一冊だけで著者のあほむさん、泉水さんの知識と体験が凝縮されているので、全部読んで全てが分からなくてもしょうがないと思います。
超速本関心したところ
第四章・第五章のブラウザのレンダリングの所は先程述べた通り詳しく解説してる本自体が珍しいのでまずはそこが素晴らしいと思いました。
パフォーマンス改善本としては、よくあるのは「表示されるまで」を高速にするというのを解説しているところが多いのですが、表示されるだけじゃなく、アニメーションだったりスクロール時の計算だったりの「操作してから」のところに焦点を当てているのは素晴らしかったです。
超速本もうちょいこうした方が良さそうなところ
こういうテクニックめいたところよりも『組織の中でどうやって継続的にパフォーマンスをキープしてるか』だったり、『組織の中で発生したパフォーマンスの障害』だったりといった実例に即した内容を聞いてみたかったです。
どうしてもHTTPの基礎的な内容だったりJavaScriptの基礎的な内容で言うと専門的な本にページ数の関係では敵わないので、そこの解説にページを割くよりは概要にとどめた上で、より実際に起きたリアルワールドでの知見が読めるとより良い本になりそうだと思いました。
その辺に関しては「 MANABIYA.tech 」で著者の泉水さんとパネルディスカッションするのでそこで深ぼってみようかなと。
まとめ
何はともあれ、恵贈してもらったからというだけではなく、「買い」の本ですね。難しいと感じてしまうところもあるかもしれませんが、今を生きるパフォーマンス職人である、あほむさん、泉水さんの知識と体験が詰まった良い本です。